他人の痛み
古代パーリ語の経典に
「いずれ10歳人間の謳歌する時代がくる」
という予言めいた言葉があるらしい。
10歳人間とはなんだろう。
幼い子どもは私という一人称で世界が完結しているので
そこにあなたや彼彼女は入ってこない。
少しずつ少しずつその子は外界をまなぶ。
いわゆる思春期に他者という概念をつよく
意識しはじめ、同時に自らをとりまく世界や性の
扉を開ける。
つまり10歳人間とは
一人称だけで完結してしまったまま大人になった人
をさすのではないか。
どんなに賢くても優れた身体性や芸術の素養があっても
他者への共感性を欠いた大人は子どもである。
他者への共感性を欠いた大人は
他者の痛みを自分の身に引き受ける想像力
を欠いている。
そういう大人が政治家になり教師になり医師になり
他者に影響力を及ぼす地位に座るとき
やはり、現在こそが「10歳人間の謳歌する時代」と
言わざるをえない。
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