『くちびるに歌を』
15歳という微妙な時代も
過ぎてしまえば過去のとある日で
振りかえって自分の影を見れば
過去が今を支配していると考えるのはおこがましい。
思い出はいつも自分に都合よく
脚色できる色褪せたねつ造写真みたいに
記憶の淵をさまよっている。
15歳のオレは15年後のオレに
手紙なんか書かなかったけれど
15年後のオレも15歳のオレに送る言葉などない。
一回性の道を誰しも歩いており
その道が逆戻りできない一回性の道だと理解したとき
人はおとなになってしまっている。
心はばらばらに割れはしない。それに
割れてもいい。
自分の心を顧みて修復しようともがけばいい。
心を刷新することはできないが
傷をいたわることはできる。
もがきはいたわりである。
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