2014年10月 2日 (木)

海原

昨日の続き。

今の長野県高原野菜農業の状況は

オレのはたち当時とはずいぶん様変わりしているかもしれない。

季節労働住込みバイトは

三食部屋付きで日給6千~8千くらい。

同じ農家に毎年お世話になると

家内労働の一員と認められて

働きやすくなる。もっとも労働は過酷だが

農家族はバイトよりはるかに働きつめる。

朝4時眠い目をこすりながら

車でだだっぴろい畑に向かう。

途中の景色には宵闇の中あちらこちらで

投光器を照らしながら収穫にいそしむ姿が見える。

どこもかしこも全面マルチビニールが張ってあって

まるで海原でイカ釣り船に乗り込むような

錯覚を覚えた。

Dsc00008

2014年10月 1日 (水)

身体

からだの記憶は忘れない。

はたち頃長野県のレタス農家の住込み季節労働に

通いつめた。バイトは朝4時か5時起き

農家の人は1時か2時からレタスを収穫しており

切り口を上に向けてずらっと並べてある。

レタスは茎を切った直後

白い乳液のような汁が出る。それを洗い流さないと

切り口の乳液が酸化して錆色になる。バイトは

しょっちゅう霧吹きタンクを抱えて

レタスの畝を行ったり来たりそれから箱詰め。

農家によってはレタスの箱詰めを

バイトにさせない。なぜかって

集荷場で検品された時に例えば

標準Lサイズ16個入りの中に規格外とか混じっていたら

注意を受けて場合によっては格下げ見切り品扱いに

なる可能性もあるから。

けっこう気合の入った検品風景だった。

ちなみに市場での葉物野菜はLサイズが基本で

いちばん値がいい。

Dsc00617

2014年9月30日 (火)

稲刈

コナギという水草がわんさか生えてしまって

今年の収量はわりとしょぼい。

草に負けすぎたのは田植え後の早い時期に

除草に入らなかったせいもあるし

他の仕事に手を取られて

田んぼが後回しになってしまったせいもある。

でもとりあえず収穫作業は楽しい。 

はぜ掛けにするための竹竿を運んだり

藁ひもで足を作ったり

ばらけた稲を藁でくくったり

稲束を抱えたり

そういうひとつひとつの労働が

身体に刻み込まれるような

からだの記憶になる。

生半可な知識の記憶よりも高度な

人の営みになる。

Dsc00800

2014年9月29日 (月)

大豆

去年採取した大豆の種がいまいちで

6月種蒔きしたらやはり芽の出もいまいち

何回か蒔き直したので

定植が2週間遅れた。

種がよくない理由のひとつはおそらく

去年11月の収穫が遅れたせいで

霜にあたりすぎたのだろう。

ことごとさように農事というのは

1年前の遅れが後々まで響く。気の長い仕事である。

でもなんとか大豆の実がふくらみつつある。

毎年10kg程度は味噌を作るための原料として

自分で大豆を育てる。

まだ幾分ふくらみきってないが

味を確かめるために枝豆として頂いてみる。

今年も実になってくれそうでありがたい。

Dsc00796

2014年9月28日 (日)

10年前お百姓を始めたばかりの頃

知り合いから株分けして頂いた

ニラを開墾したばかりの畑の

あちこちに定植した。彼らは強い。

強さというのは力自慢でない。

霜が降りると地下茎だけを残して地上部は枯れる

が死んだわけではなくて春暖かくなると

周囲の気配をうかがうように

長い爪のような緑の葉先があらわれる。

秋花が咲きしばらくすると黒い種をつける。

種の茎が枯れあがって鞘がはじける。

1年の半分は旺盛に繁茂し

再生力は野菜の中でもずば抜けている。

種と地下茎の両方から増殖できる。

今晩はニラをたくさん入れたキムチ鍋。

Dsc00795_2

2014年9月 2日 (火)

救済

義務教育時代の運動会。

走るのも遅かったし

運動音痴と自分で思い込んでいたから

特別なんの感慨も湧かない

のだがある日知人が

中学校の運動具倉庫を解体するんで

その中にもしあんたが使えそうな物があったらどうぞ

という耳より情報有り。さっそくのこのこと

その中学校へ駆けつけた。処分品といっても

一応おおやけの備品なので

ほんとは部外者が持ち去るのはいけないらしい。

再利用できそうな物たちがわんさかあった。えっへん

これは公共物略取ではなくて救済事業である。

Dsc05135 手前の柱はかつての運動会での赤組入場門。

2014年8月31日 (日)

鶏舎

新しい鶏小屋を建てていると

それを見た方々から

鶏の数を増やすんですか?

という質問を受けることが多い。

暗に卵が順調に売れていいですねえ。

というニュアンスを感じてしまう。

ちょっと口ごもってえっとーいやー

飼育羽数を増やすわけじゃなくて

一鶏舎の羽数を減らしたいのですよ。

と答えるが質問者はちょっと首をかしげる方が多い。

なるほど全体の羽数を増やさず

鶏小舎を増やすというのは経済的には損なわけで

なんだか納得いかない

のかもしれない。

Dsc05136

2014年8月28日 (木)

陽気

しんどいとき疲れたとき

つらいとき苦しいとき

思い出す歌がある。

フォークソングの大御所高石ともや

ちょっと歌詞を拝借。

♪よろこーびの朝もある

涙ーの夜もある・・・

陽気に行こう どんなときでも

陽気に行こう 苦しーことはわかってるのさ

さー 陽気に行こう

人間陽気に生きたいね。

Dsc04407 久賀の阿弥陀寺で。昨年秋かな。

2014年8月27日 (水)

南瓜

うちのおじいが生前

カボチャのことをナンキンと呼んでいたが

あれは方言なのか。

今年はバターナッツを多めに育ててみた。

かぎりなく放任栽培。

初期生育だけ草を刈って敷料にして

後の草は生えるに任せた。

カボチャは陽の光を求めて

5~6mも蔓を伸ばしトマトやキュウリの支柱を占拠したり

畑の周りを草刈り機で刈っていると

おもいもよらぬところに隠れていて

傷をつけてしまう。そんな

傷ついたバターナッツをスープにしてみた。

Dsc00647 自家製パンを浸して頂く。ワインのお供に。

 

2014年8月25日 (月)

生きる

黒澤明監督の名作。

志村喬扮するミイラ課長が

ある日癌で余命いくばくもないと知り

新しい人生を模索する。

先日フィルマラで観た。20年前にも

どこかの映画祭で観た。あらためて

我が身を振り返る好機となった。

20年前のオレはいつも不安で鬱屈した気分を

持て余していた。それに比べると

いま自分が立っている暮らしはなんて柔軟で

自由なんだろう。生き続けてよかった。

生かし続けてくれたすべての存在に感謝。でも

20年前の鬱屈さが今を導いてくれているともいえる。

人生なにがいいわるいじゃないよね。

Dsc00442