こんなに感銘を受けた
『箱入り息子の恋』ではあるが
これも状況設定のなせる技と言えなくもない。
なぜって
サロンシネマのフィルムマラソンで観たから。
それも眠気を通りこした明け方
それまでに積み重ねるように注入された映像が
澱のように無意識の底に溜まって
すぐに消化もできず発酵した胃液が
喉元にせりあがってくるように
感情の堰がどっと破れたのかもしれない。
その頃の自分の気分や環境も
その決壊を後押ししたのかもしれない。
ある映画を観るために用意されていたかのように
心が反応する。
星のめぐりあわせが予定調和して
脳神経の一部を揺さぶる。人間は
人間自身がつくった物語によって
道に迷うこともあれば
一光の希望をみいだすこともある。
最後に韓国を旅したときも
映画館に入った。釜山大学近くの
日本でいうシネコンみたいな映画館。
驚いたのは人の多さ。
一つの館内すべて客席が埋まっている。
特にアベック(古い表現?)が多い。
ざわめきとポップコーンの
甘い匂いの中でやはりソル・ギョング主演の
『力道山』を観た。日本語とハングルが混じっているので
ハングルだけよりもはるかに理解しやすかった。
ソル・ギョングの肉体が引き締まりすぎてて
オレのイメージする力道山といまいち重ならない。
映画は映画である。その後
『木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか』(増田俊也著)
を読んだ。こっちのほうが実像を描いている。
日本に来てさんざんいじめられたんだろう。
勝利に対する執着心が半端ではなかったはずである。