足るを知る
新規就農で初めからお金を得るのは
難しい。うちもいざお百姓を始めて
2年くらいはほとんど無収入だった。
毎日小さな段々畑を伐り開きながら
こんなことを地道に続けて
はたしていつ利潤になるのだろうか
と、自問自答の日々。燃料代も食費も
それなりに出ていく。もっとも崩れた畑でも
一応、父親の土地だったし
周囲の地主さんも快く畑を貸してくれたし
あれこれ近隣の方々には助けて頂いたが
それでも減っていく預金通帳は気になった。
今振りかえれば
あの最初の2年という時間は
足らないものをなんとか工夫する
足らなくて手に入らないものを望まない
足らない物よりも心の余裕を選ぶ
そんな無能の時間であった。
つげ義春さんの『無能の人』みたいな。
無能な時間を使う人みたい。